自分が住んでいるところは、いつごろからあるでしょうか。どんな場所で、どんな風景だったのでしょうか。それらが一つひとつわかってきたら、楽しいと思いませんか?
小牧市立篠岡小学校は、愛知県小牧市の東部、桃花台(とうかだい)ニュータウンにあります。「篠岡百話2012」は、篠岡小の6年生(※1)が地いきの人、きょう土史家やデザイナーと得意分野を分たんし、篠岡という場所のもつ、昔から今の物語をひもといていく総合学習授業でした。
※1. 2012年度の6年生です。
一、『オリエンテーション』
2012年5月11日。カルタづくりの始まりは、カルタの歴史や種類を理解することと、目的等プロジェクトについての説明でした。
<<<主な目標>>>
1. 専門家とのコラボレーションで制作の楽しさやきびしさを体験しながら、色んな人が使える、篠岡事典になる様な本格的なカルタを目指す。2. 古老から話を聞く・保護者の子ども時代の思い出を引き出す・地いきのお店を取材する等、色々な方法でカルタの素材を集める。
3. カルタが完成したらプログラマーの協力で電子化し、カルタを発展させる。
最後にカルタ取りをして楽しみました。
二、『「昔を思い出す」オーラルヒストリー、第一回目」』
5月16日。篠岡に昔からお住まいの3人の古老をお招きし、昔の様子を話していただきました。「人形を自分で作って遊んだ」「山あいなのでウサギがりをしてえり巻きや食用にした」などの、今との違いにおどろきました。「大山川がどれくらいきれいだったか」を質問したりしてワークシートに書きこみ、発見を発表しあいました。
三、『「昔を思い出す」オーラルヒストリー、第二回目』
5月18日。第二回目の話し手は、コトのおこりの「篠岡百話」活動を始められた入谷哲夫(てつお)先生。何十年も前は篠岡中の国語の先生でしたが、今はきょう土史家として活やくされており「名古屋コーチン作出物語」等の本も書かれています。この日のトピックの一つは「名古屋コーチン発しょうは、篠岡の池之内だった!」ことでした。
四、『オーラルヒストリーのまとめとカルタ研究』
5月23日。そろそろ発見したことのまとめと発表・共有を始めました。ワークシートに書かれた取材内容を、まずは「発見List」にどんどんリストアップしていきます。1. 番号、2. 発見日、3. 発見したもの・出来事をあまり深く考えず、たくさん書き出します。次に「発見Note」にリストアップしたものの一つひとつについてくわしく書きます。Listの1番が「ウサギがり」だとしたら、Noteの1番も「ウサギがり」にして、情報をいっちさせます。
この段階では「聞く」→「たくさんメモする」→「整理する」→「発表・共有」の作業をくり返し行いました。
取材の時はあわてて正確に聞き取れないことも。でも大事なのは、わからない点をはっきりさせておき、後で他の人とおぎない合うこと。
また、カルタを作る人がカルタについて知る必要もあります。色んなカルタでみんなで遊んでみた結果、大きさ・形・厚み・字の大きさ・読みやすさなどの使い勝手を比べ、対象年れいのすい測・遊び方・使い勝手なども考え「カルタ研究報告書」にレポートしました。
五、『「ちょっと昔を思い出す」ワークショップ』
6月16日。この日は授業参観日でした。篠岡に昔から住む8名の保護者に「篠岡のちょっと昔」を自由に質問する、ワークショップ形式で素材を収集しました。
子ども時代の遊びや流行、食べ物などのことを思い出してもらったら、「昔は学区が今より
広く、バス通学の人がいた」「学校のとなりに駐在所があった」など出ました。このような「場所」に関する情報を持っているものは、白地図に書きとめていきました。
最後に、感想を話してもらいました。「久しぶりに子どものころを思い出し、温かな気分になった」「今まで話したことのない先ぱいと再会し、この日をきっかけにゆっくり話せて良かった」という、思いがけない出来事もありました。
六、『「ちょっと昔を思い出す」ワークショップのまとめ』
6月20日。お題が「ちょっと昔」だったので、オーラルヒストリーの時とはちがう発見がありました。例えば「休み時間に‘小鳥の森’に行った」という話がありましたが、その場所はメモできたか?を確にんしました。
他のグループに、プールの側にあったという情報を得た人がいて、学校に近いので休み時間に行けたのだなということがわかりました。このように、情報を他の人に公開しおぎない合い、なぞを解いていきました。
七、『「今を見る」篠岡たんけん、お店・事業所取材』
デジカメ担当の人は、いつも授業の様子を撮影している大学生にレクチャーを受け、引率のお母さんたちとそれぞれ目的地へ。1.どんなものを売っているか(仕事内容は何か)?、2. 何がよく売れているか?、3. 昔と今とで変わってきたことは?等を質問しました。
スカイステージ33さんは、取材を特別に許可してくださり、めったに入れない最上階へ案内してくださいました。倉知仏だん店さんでは、おとなりの、当時のまま残っている篠岡郵便局の建物を見る事ができました。伊藤次郎商店さんでは「昔は豆タンやあんかが売れた」と、あつかうものの変化について聞く事ができました。
帰ってきたら「これって○○なんだよ」と話したり「カルタの素材にするにはどうしたらいい?」と相談しあったりしていました。「カルタにしたい話はどれかな~」と、カルタを意識してまとめている人もいました。「知らない事がいっぱいあった」と引率のお母さんたちももりあがっていました。
7月11日。この日はお店・事業所取材の発表とまとめでした。その一部を紹介しますと・・
スカイステージ33班:「スカイができる前は山があった」
ゼンヌ幼稚園班:「子どもがかがやくような手助けをしたいそうです」
倉知仏だん店班:「便利だけど自然もある町が良いそうです」
小牧市消防署東支署班:「入口に廃材で作ったロボットがあります」
徳泉寺班:「自分と他人を大事にする町が良いと言っていました」
祥雲寺班:「子どものたくさんいるまちになってほしいそうです」
伊藤次郎商店班:「じろーくん(お店のマスコット)の写真をとらせてもらいました」
次に、今まで集めたものの中から「カルタの素材にしたい!」と思うものが下記の1~5をみたしているか考えました。
<<<カルタにするために必要な条件>>>
1.物事、物、出来事の名前と読みがな
2.教えてくれた人の名前と読みがな
3.年代
4.場所
5.写真や絵
そして、おすすめする理由を発表しあいました。
「納豆モナカ。面白いからたくさんの人に知ってほしい」
「親鸞(しんらん)さん。良い言葉を残しているから」
「旧郵便局(篠岡郵便局)。今も建物が残っているから。建物の写真もとった」
みんな篠岡のことを知ってほしい気持ちでいっぱいですが、条件のそろっているものはなかなかありませんでした。また「篠岡地区特有」ということが理解しづらいようでした。
次に、なぜ1~5が必要なのか、デザインのことにふれながら説明しました。
カルタには「絵札」「文字札」があります。面白い素材でも、絵札にのせる写真や絵が無いとカルタとして成立しません。また、出来事や物がどこにあったかわかれば、より理解が深まるので、場所情報もできるだけはっきりさせ、地図にプロットしておきましょうと話しました。
また、カルタ以外に細かい説明をのせた解説書や年表をつけるので、3.の年代は必要ということを説明しました。
2学期は集めた素材の精選です。実さいにカルタの大きさや形などを具体的に考えていくのです。こうして、1学期最後のカルタづくり授業は終了しました。